企業の最高益更新と株価の現実
こんにちは、サラリーマン投資家のた~とるです。
株式投資をしていると、決算ごとに企業利益が大きく変動することに驚かされることが多いです。
そんな中で「保有株が最高益を更新した」というニュースがあったら嬉しいものですね。
ですが、最高益を更新しても比例して株価がついてくることがない。そんな経験したことがある方も多いと思います。
今回は、表面的なポジティブサプライズと株価が、実はあまり関係ないということを書きたいと思います。
当ブログでは何度か同じような趣旨のことを書いているんですが、投資の利回りの源泉は企業の利益に依存しています。そのため、企業価値も利益をベースに算出されます。(割高でも成長株がもてはやされるのは、将来の成長した1株利益が期待されているからです。なお、その将来利益が実現するかは別の話です。)
さて、利益と株価が大きく乖離していると、最高益更新や上方修正がポジティブサプライズとならないケースがでてきます。
ある企業が、最高益で1株利益10円、株価1,000円をつけているとします。
これは1年間分の最終利益の100年分(=PER100倍)の株価であることを意味します。この企業が割高なのは、感覚的に分かると思います。投資利回りでいうと1%に過ぎません。ほかにもっと割の良い投資先はゴロゴロあります。アセットクラスは問いません。株や不動産はともかく、先進国債券ですら、1%を超えるものは探せば見つかると思います。
さて、このPER100倍の企業が最高益を更新したらどうなるでしょうか。
1株利益は「10%も」上昇したとします。1株利益は11円となり、最高益を更新します。
一見、最高益更新となると響きはいいのですが、これくらいでは株価にポジティブなものではありません。
これでは、PER100倍だったものがPER90倍程度になるわけで、本質的には株価が割高の状態は変わりません。
こういう決算が出たときには、「期待を下回った」として株価が下落するケースが頻発しています。市場の期待が高すぎることが原因で、少しでも期待を下回る決算ならネガティブサプライズとして捉えらえたりします。最高益は更新したというのに。
株価は人の期待で形成されていることの証左ですね。
ですので、最高益更新という言葉だけに心をときめかせても意味はありません。
一方、業績が急上昇して1株利益が2倍にも増加した株があるとします。こういう場合はインパクトが強いですし、株主への還元の期待ができるので、ポジティブサプライズとして捉えられるケースが多いです。
このような1株利益の急上昇は、実は業績の低迷している株ほど発生しやすいです。
アメリカの著名ファンドマネージャーであるピーターリンチ氏の著書「株で勝つ」で記載のある「業績回復株」です。
例えば、景気の平常時に1株利益が10円の企業が、不景気時に業績が低迷し、1株利益1円しか出せなくなるとします。当然株価は大幅に下がります。
ところが、景気が少し回復してくるとこの企業の利益も戻っていきます。1株利益は2円や3円になるわけです。これでも平常時の利益を下回りますが、決算時の見た目では「前年比で利益100%増」のようになるわけで、ポジティブサプライズとなることがあります。
僕自身、投資歴14年の中で、決算後の株価が不可解な動きをすることをたくさん見てきました。その値動きの解説を見ることもありますが、人によって意見が違い、しかも後付けの解説にすぎません。
つまるところ、最高益更新や上方修正・下方修正などは、市場や投資家の期待や感覚次第でどうにでも捉えられるということです。あまり気にしすぎないほうが良いかと思います。
なお、上述の書籍「株で勝つ」は、初版が30年以上前の古い本でタイトルも平凡ですが、株式投資の名著です。「株とはなんたるか」に興味がある方は、ぜひ一度読んでみてください。
以上、た~とるでした。